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狛犬
愛好会
File⑦
・「列車に乗って旅に出る。独り旅でも結構楽しいものである。窓際には、缶ビールが一つ窓
に写る真影を見ながら今日はご満悦だと自分をほめるのだ。」
・「町内を見渡すと昔とは、ほとんど変わらない風景が飛び込んで来て随分と年をとったわり
には変化のない環境に警嘆してしまうものである。」
・「いいじゃないか貧乏だって。誰しもが少しながら悩む一つの言葉に息をのむ。今日の御飯
を気にしながらポケットの中の小銭を数え苦笑いするんだ。」
・「精神の悪を追討し、自慢げに微笑む自分を見る。でも、精神論の中で悪と決めつける程の
正義は存在しないじゃないか。」
・「壁にぶち当った。完璧主義者にとって挫折ほど苦しいものはない。いつも、自分中心に
回っていた世の中に裏切られる瞬間である。」
・「幼き頃、悩みに悩み抜いた昔日。日暮前に大きく赤くはれ上がった夕日は逆行として黒い
影となって走り出す。子供の頃の小さな思い出である。」
・「赤いバラを持った少女がこちらを見て微笑んでいる。狡猾な笑顔のうらには打算が読みと
れる。」
・「全盲の男が耳をすましている。彼の五感は何よりも鋭く殺気だっている。誰しもが理解出
来ない事実を彼は簡単に洞察するんだ。」
・「いつしか見た光景を反復しながら今日もためらいの青い顔をしている。自由に振る舞い好
き勝手にやってきた人生にいつもせん望のまなざしで見ているわがままと言えばわがまま
かもしれないし、それを生き甲斐としてやって来た人生に悔いることはない。杏然たる田
園風景が好きだ。この先気づけばいいんだけれど、自由奔放に自分を評価する自分を見る
最悪の構図だな。」
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